教員採用試験の倍率が低い!?~ 教育界の未来~

教員になってみたいんだけど、ブラックな環境だってよく聞くよね。

実際、どうなんだろう?

教員採用試験の倍率が下がっているっていう話もあって、教員になるのは昔よりなりやすいみたいだよね。

そうなんだ。
でも、倍率が下がってるってことは、教職の魅力が低下してるのかもしれないよね。
確かに、教員の仕事は大変だし、労働環境も厳しいところがあるよね。
でも、子供たちと直接関われるし、教育に携わる喜びも大きいと思うよ。

そうだね。
しっかりと自分の意志を持って、教員を目指すことが大切だね。

教員採用試験の現実 ~昔より倍率が低い!?~

教員採用試験は、教職に就くための重要なステップであり、多くの希望者がこの試験に挑みます。
しかし近年、教員採用試験の倍率が低下しているという現象が観察されています。

令和6年度(2024年度)教員採用試験の結果が各都道府県、出揃ってきていました。
昨年度より倍率が下がっているところも多く、ほぼ1倍という区分もあったりします。

東京都の教員採用試験 ~10年間の区分データを紐解く~

では、ここで日本の首都がある東京都の教員採用試験を例に挙げたいと思います。
東京都の10年間(平成27年度~令和6年度採用)のデータがこちら。

平成
27年度
平成
28年度
平成
29年度
平成
30年度
平成
31年度
令和
2年度
令和
3年度
令和
4年度
令和
5年度
令和
6年度
小学校全科
受験者数 [A] 4,647 4,494 4,368 4,098 3,694 3,328 3,053 2,725 2,555 2,280
名簿登載者数 [B] 1,262 1,379 1,436 1,503 2,030 1,614 1,546 1,164 1,767 2,009
受験倍率 [A/B] 3.7 3.3 3.0 2.7 1.8 2.1 2.0 2.3 1.4 1.1
中・高共通
受験者数 [A] 7,494 7,417 6,961 6,399 5,232 4,837 4,366 4,225 3,791 3,965
名簿登載者数 [B] 1,130 1,056 901 902 1,175 1,189 1,319 988 1,355 1,900
受験倍率 [A/B] 6.6 7.0 7.7 7.1 4.5 4.1 3.3 4.3 2.8 2.1
特別支援
学校
受験者数 [A] 1,174 1,025 951 860 762 664 610 540 499 726
名簿登載者数 [B] 353 182 203 203 259 206 197 193 355 556
受験倍率 [A/B] 3.3 5.6 4.7 4.2 2.9 3.2 3.1 2.8 1.4 1.3

この表での「名簿登載者数」がいわゆる「合格者数」です。
この表から、東京都の教員採用試験の受験倍率は、過去10年間で全般的に低下していることがわかります。

「受験倍率」だけに注目し折れ線グラフにしてみると、以下の通り。

東京都教員採用試験の10年間の倍率の推移

小学校全科

平成27年度から令和6年度にかけて、受験倍率は3.7から1.1に低下しています。
この減少は段階的に発生しており、特に平成31年度から令和2年度までの間に受験倍率が大幅に低下しています。

中・高共通

こちらも同様に受験倍率は減少しており、平成29年度の7.7から令和6年度の2.1へと低下しています。
特に、平成30年度から平成31年度にかけての受験倍率の低下が顕著です。

特別支援学校

この分野でも受験倍率は減少傾向にあり、特に平成28年度の5.6から令和6年度の1.3へと大きく低下しています。

全体的に見ると、各分野で受験者数は減少しており、名簿登載者数(合格者数)は比較的安定しているか、若干増加している傾向が見られます。
これは、教員採用試験の倍率低下の主な要因となっています。

また、各分野で受験倍率が低下していることは、教員職への志望者数が減少していることを示唆しています。
これらのデータは、教員離れや教職の労働環境の問題など、教員採用試験の倍率低下の背景にある可能性のある要因を裏付けるものとなっています。

東京都の教員採用試験 ~6年間の小中高教科別データを紐解く~

続いて、小中高の教科別データ(平成31年度~令和6年度採用)を見てみましょう。

平成31年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度 令和6年度
中高国語 3.7 2.7 2.7 3.3 2.6 1.6
中高地歴 7.3 5.9 5.3 6.6 3.9 3.6
中高公民 6.3 6.2 6.2 6.7 4.1 4.0
中高数学 3.7 3.4 2.8 3.6 2.0 1.4
中高物理 3.0 4.3 2.3 2.3 1.6 1.3
中高化学 3.5 3.8 2.5 3.1 2.0 1.7
中高生物 4.3 4.3 3.2 5.0 2.3 2.0
中高英語 2.6 2.7 2.2 2.4 1.8 1.3
中高音楽 3.2 3.2 3.3 5.8 3.6 2.8
中高美術 2.3 3.3 2.2 2.8 2.1 1.2
中高保健体育 7.8 6.8 4.9 9.7 6.2 3.9*
小中音楽 4.2 3.4 4.8 4.3 2.4 1.9
小中美術 2.6 2.0 1.9 2.2 1.6 1.2
小中高家庭 3.4 2.8 2.8 2.1 1.6 2.0
中技術 1.6 1.4 1.5 1.4 1.4 1.3
高情報 6.5 42.0 39.0 9.0 2.4 2.0
高商業 14.3 61.0 11.0 21.0 1.5
高工業機械系 1.3 2.7 8.0 2.0 2.0 1.2
高工業電気系 3.5 2.4 2.7 1.4 1.7 1.1
高工業化学系 2.0 1.0 4.0 1.2 3.0
高工業建築系 2.0 6.0 2.5 5.0 5.0 6.0
高工業工芸系 1.0 1.5 1.5 1.5 1.0
高農業園芸系 5.3 4.5 4.0 4.5 2.3 2.0
高農業食品系 3.0 10.0 1.8 1.0 1.0
高農業造園系 2.0 2.0 1.0 1.0 2.0
高農業畜産系 5.0 4.0

* 保健体育は、令和6年度採用から小中高での採用となっている。

東京都教員採用試験の過去6年間の主要5教科の倍率の推移
これらのデータから、次のようなことが言えます。

全般的な受験倍率の低下

全般的に、受験倍率は平成31年度から令和6年度にかけて低下しています。
これは教職への興味の低下や他の職種への移行を示唆している可能性があります。

教科別の違い

一部の教科、特に「高情報」と「高商業」は他の教科に比べて受験倍率が非常に高い時期があります。
これらの教科は特定の年度において非常に競争が激しいことを示しています。
高等学校の情報・商業・工業の変動

これらの受験倍率は、他の教科に比べて非常に変動が激しいことが見られます。
その理由は、これらの教科に対する需要と供給のバランスが他の教科に比べて異なることを示しています。
一貫性のある低受験倍率の教科

一部の教科、特に「中技術」「高工業機械系」「高工業電気系」などは、比較的低い受験倍率を維持しています。
これは、これらの教科に対する競争が他の教科に比べて低いことを示しています。
高等学校の特定の教科の受験倍率の増加

例えば、「高工業建築系」の受験倍率は、令和4年度から令和6年度にかけて増加しています。これは、この教科に対する興味や需要が高まっている可能性を示しています。

募集および名簿登載者なし

一部の教科、特に「高農業畜産系」などでは、多くの年度でデータがありません。
募集がなかったり、名簿登載者がいなかったりしたことを示しています。

「高農業畜産系」に関しては、6年間中2年間しかデータがないため、受験倍率の全体的な傾向を把握することは困難です。

教員採用試験の倍率が低い背景

教員採用試験の倍率が低い背景には、教職の魅力低下、給与の問題、労働環境の厳しさなどが挙げられます。
これらの要因は、教職への志望者数を減少させ、教員採用試験の倍率を低下させています。

教員採用試験の倍率の低下、つまり教職への志望者数の減少は、未来の教育界において教育の質が低下するリスクをもたらす可能性があります。

未来の教育界への影響

最近、よく教員不足という言葉を耳にします。
病気による休職や産休・育休の取得など、様々な理由で教員が足りなくなっています。

しかし、代わりの教員が見つからず、少ないままで学校運営を続けているケースや、管理職(校長、副校長、教頭)が授業を行ったり、担任業務を行ったりするケースも多く見受けられます。

このような教員不足は学校教育の質を低下させ、子供たちの教育機会に影響を与える可能性があります。
教員採用試験の倍率が低いことは、教育界において深刻な問題を示唆しているのです。

教員不足を解決するにはどうすればいいのか

教員不足を解決するには、まずは教員採用試験の倍率を改善していく必要があります。
そのためには、教職の魅力を高め、労働環境を改善する必要があります。

政府や教育関係者は、教員の待遇改善やキャリアパスの明確化を図り、教職への志望者数を増やす方策を考える必要があります。

教員採用試験の低い倍率を上げよう ~教育界の明るい未来のために~

教員採用試験の倍率が低い現象は、教育界における多くの問題を露呈しています。
解決策を見つけて教職の魅力を回復させることが、未来の教育界を支える重要なステップとなります。

今回は、教員採用試験の倍率が低い現象について、実際の例を元に紹介しました。
この事実に対する理解を深め、教育界の未来に向けてどうしていくべきかを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

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